歯科コラム

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他院で抜歯を宣告されるも、精密根管治療で保存に成功した症例|岡山市北区北長瀬の歯医者|金山デンタルクリニック

他院で抜歯を宣告されるも、精密根管治療で保存に成功した症例

今回の症例は、他の病院で抜歯と宣告されてしまうほどに重症化してしまった根の先の病気(根尖性歯周炎)に対して、精密根管治療を行うことで歯の抜歯を回避することに成功した症例です。

 患者様は、以前にも痛みがあったがその際に別の歯科医院では抜歯が必要であると診断され、そのまま通院を中断されたとのことでした。
今回は、以前よりも強い痛みが出てしまい、それでもなんとか歯を治療して残してもらえないかということで当院を受診されました。
 根の病気に対する治療は、根管治療といいます。ある日本の研究では、日本の大学病院での根管治療の成功率は約70%台という報告があり、一般開業医ではさらに成功率は低いとされる報告があります。
実際に根の病気が原因で抜歯になってしまう歯はとても多く、これらの報告は実際の臨床の現場感覚と一致しているものだと考えられています。
 しかし、海外で発表されている論文では、適切な根管治療を行った際の治療の成功率は約90%と報告されているものがあります。なぜ、日本と海外でこれほどまでに成功率に違いが出ているのかも解説しながら今回の症例を紹介させていただきます。
 どうぞ最後までご覧ください

患者様の情報

患者様の基本情報

  • 30代 男性
  • 全身疾患などなく、その他に既往歴もなし
  • 非喫煙者で、生活習慣に問題なし

初診時の主訴

右下の奥歯が痛いので診てほしい。他の病院で抜歯と診断されたが歯を抜きたくない。

歯科医師による診断

 右下奥歯の腫れと激しい痛みのために当院を受診された。何もしなくてもズキズキとした激しい痛み(自発痛)と歯を押さえたり(圧痛)、ものを噛んだりする(咬合痛)と感じる激しい痛みを自覚していました。また、歯茎も大きく腫れていました。レントゲンを確認すると根の先端にとても大きな黒い影を認めました。
 痛みなどの症状や、レントゲンの所見から急性の根尖性歯周炎と診断しました。また、その病気の進行はかなり進行しており重症化している状態でした。根管治療を行うことで、病気が治癒する可能性は決して高くはありませんが、可能性が無いわけはではないと判断しました。

治療計画と治療内容

治療計画

 まずは、強い痛みと歯茎の腫れを一時的にでも落ち着かせるために、抗生剤、抗炎症剤を服用してもらうことにしました。その後、再度CTを撮影し、病気の原因について診査を行い、ラバーダム、マイクロスコープを用いて根管内の感染物を除去し、MTAセメントにて根管(神経の管)を充填し、その後、病気が治癒するか経過観察を行うこととしました。
 経過観察中は3ヶ月ごとにCTを撮影し、病変の縮小傾向を確認します。病変の縮小傾向が確認できれば、ジルコニアの被せ物を装着するという計画をたてました。

治療内容の詳細

・CT撮影

通常のレントゲンと異なり、CTでは、根の形態を3次元に確認できるためより詳細に根の状態を診査することが可能になります。CTで確認をすると前回の根管治療で十分な治療ができていないことがわかりました。通常は、根の先端まで充填剤(ガッタパーチャ)が詰めるべきはずがなされていない状態でした。そのため、根管内に隙間が存在し、隙間に感染源が残存しており病気が発症した可能性があると考えられます。

ラバーダム下による根管治療

 日本の根管治療と海外の根管治療でなぜ成功率に大きな差が存在するのか。。。
理由はラバーダムの使用率の違いにあります。
 海外ではラバーダム防湿という歯にシリコン性のシートを装着して根管治療をするのが当たり前なのに対して、日本ではほとんど使用されていません。日本の保険診療では、時間とコストを最小限に治療を行うため装着に時間とコストがかかるラバーダムはほとんど使用されないのです。
 ラバーダムを使用することのメリットは、治療中に歯が唾液に触れることがなくなる点と、治療中の消毒液を口腔内で安全に大量使用することができる点、治療中の術野の確保などがあります。

マイクロスコープの使用

 マイクロスコープとは歯科用の顕微鏡です。強い光源を有しており、根管内を明るく拡大してくれるので、根管内の感染源を目視下で取り除くことができます。日本でのマイクロスコープの導入率は高いのですが、使用率は低いとされています。ラバーダムと同様、保険診療がメインの日本では使用されることが少ないことと、マイクロスコープを使いこなすためにはそれなりに時間をかけたトレーニングが必要になるため使用率が低いとされています
 今回は、マイクロスコープを使用して、感染している根管充填材の確実な除去と根の先端までの洗浄と確実な根管充填を行いました。

MTAセメント(根管充填材)の使用

 通常、根管充填で使用される材料はガッタパーチャと呼ばれるゴムのような材料です。ガッタパーチャには、細菌に対する対抗力(抗菌力)がありません。しかし、MTAセメントには、細菌に対する抗菌力と骨誘導能があるとされており、ガッタパーチャ単独と比較して根尖性歯周炎の治癒率を大きく引き上げるとされています。
MTAセメントは保険診療には導入されていません。
 今回は、病変が大きく難治性のためMTAセメントを使用して、しっかり根の先端まで隙間なく充填することを心がけました。

治療期

治療回数3回
治療期間は2週間

治療後の状態

治療後の口腔内の状態

 今回の病気はかなり進行しておりましたが、治療後すぐに痛みは消失し、病気の改善傾向をCTでも確認することができました。今回治癒までに要した期間は3ヶ月でした。術後1年後には黒い影は消失しました。

 今後は、病気の再発がないように定期的にCTを撮影して経過観察を行う予定です。また神経の無い歯は歯根破折のリスクが高くなるため、夜間就寝時の歯ぎしりや食いしばりに対してナイトガード(就寝時用マウスピース)の装着が必要になります。
歯の周りが汚れていたり、被せ物のかみ合わせが悪くなると再発のリスクが高まりますので、定期的なメンテナンスが重要になります。

費用について

  • 治療にかかった費用の内訳

精密根管治療 ¥121000(税込)

上記の費用は治療当時の価格です。現在の価格と異なる場合がありますご注意ください。

自費診療に関しては、現金だけでなくクレジットカードでのお支払いが可能です。
ご希望の方はデンタルローンをご利用いただくこともできます。

まとめ

 今回の症例は、他院では抜歯と判断されてしまうほどの重症化した症例でした。
当院でも決して簡単ではありませんが、なんとか歯の保存をすることができ一安心でした。
 歯の病気には、痛みがなく進行するものも存在します。痛みなどの症状が出る頃には病状が進行しており手遅れになる場合も珍しくありません。当院では、なるべく歯を残すために日々努力を行なっていますが全ての歯を救えるわけではありません。日頃から定期的に歯科医院に通ってメンテナンスをしておくことが歯にとって一番大切なのです。最近、歯医者に行ってないなぁという方はぜひ一度歯医者さんでお口の中をチェックしてもらいましょう。

 また、他の病院で治療不可能と診断された歯であっても諦めずにセカンドオピニオンをしてください。当院でもセカンドオピニオンを積極的に受け付けております。

 根の病気でお困りなら岡山市北区にあります金山デンタルクリニックまでお気軽にご相談ください

 

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