歯科コラム

Column

マタニティ歯科について|岡山市北区北長瀬の歯医者|金山デンタルクリニック

マタニティ歯科について

妊娠期の患者さんに対しての歯科の役割

妊娠中は体に大きな変化が現れます。口腔内も例外ではなく、昔から「一子を得れば、一歯を失う」を言葉があるくらい、妊娠中や産後の期間に母体の口腔内の健康が損なわれることは一般的に知られていました。
しかし、これは妊娠したから歯がもろくなるということではありません。
妊娠したことによって口腔内の環境が変化をするため、それに合わせた口腔ケアの支援が必要となるということなのです。

妊娠期のお口の変化と胎児への影響

妊娠期には女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が急上昇します。
その影響で唾液の酸性度が増し、粘り気が強くなるため、歯周病原性細菌が増加します。
それにより、虫歯や歯肉炎・歯周炎になりやすくなったり、悪化したりしてしまうのです。また口腔内の健康状態の悪化は母体だけでなく、胎児にも影響することが分かっています。母子健康手帳の「妊娠中と産後の歯の状態」のページを開いてみると、「むしばや歯周病などの病気は妊娠中に悪くなりやすいものです。歯周病は早産等の原因となることがあるので注意し、歯科医師に相談しましょう」と記載されています。ここに書かれている通り、中・重度の歯周病と低出生体重児出産、早産の関係が報告されているのです。

歯周病と低体重児出産の関係

なぜ歯周炎と低出生体重児出産・早産が関係してくるのでしょうか。
まず、低出生体重児と早産児についてお話します。
低出生体重児とは出生時の体重が2500g未満の赤ちゃんのことで、日本では低出生体重児の割合は増加していっています。
また、早産児とは胎週数37週未満で出生した赤ちゃんのことです。正期産児は胎週数37〜42週で出生します。早産児では正期産児と比較して疾患罹患率が高いことが分かっています。日本の新生児医療は水準が高く、救命が難しいとされるリスクの高い早産児でも命が救われるケースは多いですが、成長とともに様々な合併症や後遺症などが生じやすいというのも事実なのです。
歯周病が早産に影響するメカニズムについてですが、正期産以前(妊娠37週未満)に歯周病菌に感染すると、炎症性サイトカインという物質が過剰に分泌されることが原因とみられています。炎症性サイトカインはプロスタグランジンや他の子宮収縮物質の放出を助長してしまうために、早期に頸管熟化や子宮収縮を起こさせてしまい早産を促してしまうと考えられております。
また歯周病原性細菌や炎症性物質が血流を介して胎盤・子宮に感染を起こすことで胎児の成長不足を招き、低出生体重児出産を招くとも言われています。
とくに、ある研究によると歯周病に罹患した妊婦は早期低体重児出産のリスクが7倍も高くなるという報告がされています。
もちろん、歯周病が主たる原因ではなく「妊婦のやせ」など様々な理由によって起こるのですが、7倍のリスクというのは無視できない数字です。

妊娠期の患者さんと歯科との関わり方

妊娠期はつわりがあったり、飲めない薬があったり、歯科の受診にあたって不安なことも多いと思います。
妊婦歯科検診を受診される方は増加してきているものの、義務ではないため、いまだ受診率は高くありません。
妊婦さんに対しての歯科の役割は、まずはご自身のお口の中の状態を知っていただいて、妊娠期のケアの仕方をお伝えして支援することが一番だと思っています。
リスクが高い状態であれば、無理なく治療をしていける方法を相談していけたら良いと思います
妊娠中の体調は人によって千差万別で、歯科診療についても「これが正解」というものはありません。
その患者さん個人にとって、口腔管理や歯科の受診が負担にならないように支援をし、妊婦さんと胎児の健康に寄与していくことが歯科医院の役割だと思っています。 
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