糖尿病と歯周病の関係
- 2023年5月28日
- 歯周病
糖尿病と歯周病の関係
今回は糖尿病と歯周病の関連性についてお話していきます。
歯科医院でなぜ糖尿病?と思われるかもしれませんが、糖尿病と歯周病には密接な関係があるのです。
当院では、歯周病治療に力を入れています。
糖尿病の患者様の歯周病治療を行うことで、歯周病だけでなく糖尿病の数値にも良い影響を与えるという経験も多くしています。最近では、内科医の先生から直接、糖尿病治療の一貫として歯周病治療の紹介を受けることもあります。
当院では、歯周病治療に力を入れています。
糖尿病の患者様の歯周病治療を行うことで、歯周病だけでなく糖尿病の数値にも良い影響を与えるという経験も多くしています。最近では、内科医の先生から直接、糖尿病治療の一貫として歯周病治療の紹介を受けることもあります。
糖尿病とは?
糖尿病とはインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。
厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査」の結果、20歳以上の国民のうち糖尿病が強く疑われる人(糖尿病有病者:HA1c6.1%以上)、糖尿病の可能性を否定できない人(糖尿病予備群:HA1c5.6%以上6.1%以下)の割合と人数は、いずれも12.1%、約1,000万人と推計されています。
つまり、現在およそ2000万人の国民が糖尿病の患者さんであるか、その予備軍であると考えられています。
糖尿病の治療方法として、まず思いつくことは食事療法・運動療法・服薬治療です。実はこれらに加えて歯周病治療等の口腔ケアも重要なのですが、これは意外と知られていません。
糖尿病と歯周病の関係
前述しましたように、糖尿病と歯周病には密接な関係があり、相互に病状を悪くし合う関係にあります。簡単に言うと、糖尿病を患う方は歯周病になりやすくなり、一方で、歯周病になると今度は血糖コントロールが悪くなるという悪循環を引き起こすということです。
ある研究では、糖尿病患者は健康な人に比べて2.6倍歯周病になりやすいという報告がされています。血糖値が高い状態が続くと、細菌などと戦う機能を持つ白血球の働きを弱めてしまいます。歯周病は、歯周病原因菌が引き起こす感染症のため、糖尿病により白血球が正常に機能しないことで歯周病に感染しやすくなるのです。
それとは逆に、歯周炎が進行した状態では、血糖値のコントロールに悪影響を与えることが分かっています。
歯肉の炎症である歯周病が糖尿病にどう関わってくるのでしょうか。歯周病とは歯周病細菌による感染症です。歯周病の原因菌は主にグラム陰性菌と呼ばれる細菌群に属しており、内毒素という毒素を排出する性質があります。
歯周病が重症化し、歯の周りの組織が弱って容易に出血しやすくなってくると、そこから毒素が血流に乗って体内に入りやすくなります。中等度以上の歯周ポケットが口の中全体にある場合、そのポケット表面積の合計は掌(てのひら)と同じ程度と考えられています。
それだけ大きな面積の傷口から、常に毒素が体に侵入していると考えてみてください。
そうなると体も毒素に対抗するため、免疫システムを活性化させる物質を大量に産生します。ただ、この物質こそがインスリンの働きを阻害してしまうことが分かってきたのです。
糖尿病への歯周病治療の効果
歯周病の毒素に対抗するために産生した物質がインスリンの働きを弱め、その結果、血糖コントロールに悪影響を与え、糖尿病が発症・進行しやすくなるという仕組みです。
逆に言うと、歯周病をきちんと治療して、歯周ポケットから体内へ内毒素が侵入するのを防いであげると、インスリン抵抗性物質の産生が低下するため、血糖の改善が期待できるとも考えられるようになりました。
一般に歯周治療で改善するヘモグロビンA1cの改善度は平均0.4%くらいと言われています。数値を見ると少ないように見えますが、これは、糖尿病のお薬1剤分に匹敵するという人もいます。
したがって、重度の歯周病に罹患している糖尿病患者さんにとって、歯周病の治療を行うことは糖尿病の進行を抑えるために重要であり、なおかつ血糖コントロールを改善することで、結果的に歯周病の病状も改善させていくことに繋がるため、口腔ケアは非常に有用なのです。
まとめ
地域や職場の健診で糖尿病や予備軍の可能性が指摘された方々は、かかりつけの歯科医で歯周病のチェックをぜひ行ってみてください。歯周病の治療が糖尿病の予防や治療につながることを皆様に知っていただき、当院が糖尿病治療の一助になれることを切に願っております。