ラバーダム防湿について
- 2023年7月9日
- 根管治療
ラバーダム防湿について
今回はラバーダム防湿についてお話しをしようと思います。
皆様はラバーダム防湿という言葉を聞いたことがありますか?
もしかするとほとんどの方が聞いたことのない単語かもしれませんね。なぜなら、日本の歯科医療においてラバーダムの重要性は認知されていますが、実際に使用はほとんどされていないからです。それらの原因は、日本の保険医療制度にあるとも言われています。
そのような良いものだとは知っているけど、あまり使用されていないラバーダムについて解説して行こうと思います。
ラバーダム防湿とは?
ラバーダム防湿というのは1864年にアメリカのDr.Barnumが考案したとされています。ラバーダム防湿とは専用の器具を用いて、治療する歯にゴム製のシートをかけることを言います。
現在ではアメリカやヨーロッパ、日本の歯内療法(根の治療)の学会が発表している治療ガイドラインでラバーダムの使用が推奨されています。
現在の米国の根の治療を専門とする歯科医師の約90%がラバーダムを使用していると言われています。
日本の現状は、日本歯内療法学会の専門医で約60%という報告です。また学会の会員で51%、会員でない歯科医師の使用率は約14%という結果です。
ラバーダム防湿の目的・メリット
ラバーダム防湿をなぜ使用するのか。それにはいくつか理由があります。
①治療している歯に唾液が触れるのを防ぐ
根管治療とは根っこの中を綺麗にすることが治療になりますが、治療中に唾液が触れていると唾液中に含まれる細菌に触れていることになります。せっかく綺麗にしていても、唾液によってさらに汚染する可能せがあります。そのため、治療する歯が唾液に触れないようにするのは重要になります。また根の治療以外にも、セラミックの詰め物を歯に接着するときや、虫歯治療でできた穴をレジンで埋める際にも、唾液や呼気に含まれる水分が接着効果を低下させてしまうためラバーダムを行うことが望ましいとされています。
②治療する歯を見えやすくする
奥の歯の根の治療を行う場合は、特に舌や頬が邪魔になって視野が取りづらく治療が困難になる場合があります。特にマイクロスコープを使って治療する場合にはかなりのストレスになります。ラバーダムを使用することで、治療する歯だけ隔離することができ、邪魔な舌や頬のお肉を排除することができるため、視野が大きく確保され治療の効率が図れます。マイクロスコープを使用して治療を行う際にはラバーダム防湿は必須となります。
③治療する器具や薬剤を安心して口腔内で使用できる
とくに根管治療(根の治療)では、小さくて先の尖った器具を多く使用します。このような器具が誤って喉の方へ落ちてしまうと大変危険です。しかし、ラバーダムをしていれば決して口の中に器具を落とすことはありません。また、根の中の消毒などに使用する薬剤も正しくラバーダムを行えば口の中に漏れることもないので安心して使用することができます。治療を受ける患者様の身を守るためにもラバーダムは重要なのです。
なぜ日本ではラバーダムをあまりしないのか?
これだけメリットの多いラバーダムですが、なぜ日本ではあまり使用されないのでしょうか?
いくつか理由はあるかと思いますが、一つには日本の医療保険制度も関係していると言われています。日本の保険診療ではラバーダムを使用しても、使用しなくても治療費用は同じに設定されています。保険診療では、治療の質で治療費が決まっているわけではありません。なので保険診療の性質上、ラバーダムの材料的コストと時間的コストを考えると保険診療でラバーダムを行うことは困難であり、多くの歯科医院でラバーダムが使用されていません。
ちなみに海外では、専門医による1本の奥歯の根の治療に30万程費用がかかるとされています。日本の保険診療では根の治療は3割負担で1本約3000円程度です。治療費だけ見れば、約100倍ほどの差があります。このような医療制度の背景が、日本でラバーダムをしない歯科医院が多い理由かもしれません。
まとめ
今回はラバーダムについて解説しました。ラバーダムについて初めて聞いたという方もおられるかもしれません。
ラバーダムは、治療の質を保つために大変重要なものになります。当院では主に自由診療の際、必要な場合には追加費用なしでラバーダムを使用しています。主に、根っこの治療や、ダイレクトボンディング治療ではほぼ100%で使用しております。(ラバーダムが使用できないケースがあるため100%になりません。)
保険診療では、ラバーダムとは異なる簡易装置(ZOO)を使用しながら治療の質が低下しないよう取り組んでおります。
ラバーダムを使用した根の治療をご希望の方は、岡山市北区北長瀬・問屋町にあります金山デンタルクリニックへお気軽にお問い合わせください。